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化物語 なでこスネイク [アニメ]

 先月気合入れてレンタルしたというのに、記事にするのがようやく今日とかいう(ぁ もうつばさキャット(上)も出るって言うのにねぇ。
 それはさておき、なんだか化物語はBDの売上が好調らしい。なんだかっていうのも変だが、まぁ、売れているようで何よりである。こういう作品はやっぱ売れてほしいし。

化物語 第四巻 / なでこスネイク 【通常版】 [DVD]

化物語 第四巻 / なでこスネイク 【通常版】 [DVD]

  • 出版社/メーカー: アニプレックス
  • メディア: DVD

 毎度の事ながら、この作品は1つ1つのエピソードごとにテーマがある。作品を通してのテーマも勿論あるが、そのどれもが重く、それ故に内容が濃い。
 今回の「なでこスネイク」のテーマは、おそらく「ワガママ」だ。2話の構成で描くものだけに、結構見た目としても分かりやすい内容になっていた。

 だが、実際にはそう分かりやすいものではない。ボクはそう思う。ぱっと見、イマイチ読解できなかったからだ。なんというか、表しか見えなかったというか。

 表。これは言うまでもなく、今回の事件となった「告白」にまつわるもの。千石撫子という女の子は、大人しい性格をしているせいで自己主張が弱く、孤立しがちな性格をしている。
 しかしまぁ、中学生時分などというのは、「その人がどんな人なのか」なんてことよりも、「可愛い」とか「綺麗」とか、外面的な魅力に囚われやすい。
 思春期に入った頃の人間なんてそんなもんというのは、なんら珍しくもなく、まさにリアルな思考と言えよう。そして、その後の顛末こそ時代を反映している。

 そう、ワガママなのだ。今時の子供らしい、実に身勝手で乱暴な感情だ。「自分の好きな人が別の人を好きになったから、そいつを呪ってやる」とか「告白したら振られたから呪ってやる」とか、どこまでも「自分」しかなく、相手のことなど何一つ考えていない。
 行為そのものは稚拙で、普通ならば「こんなことにはならなかった」ハズだった。描かれた物は作風として貫かれている「怪異」ではあったが、では現実なら起き得ないことだろうか。
 否、そんなことはない。本人のワガママで、ほんの悪戯とかいうレベルで「いじめ」等の行動に出ることは珍しくない。「あいつ、ウザくねぇ?」とかね。
 遊び半分で色んな仕打ちをした現実の事件だってあった。そして、その結果として死亡したケースも、残念ながら存在するのだ。

 そんなつもりはなかった。まさか、こんなことになるなんて。もし、事が起きた後ならば、こんな台詞がまるでお約束のように聞けることだろう。
 当人にとっては、何て事のないものだと思っても、世の中の色んな事象が絡みあった結果として、命すら危ぶまれることに発展することだってある。
 だから、そうしたことを「してしまう」当人たちは、自分が「何をしているのか」気づいていない。どういう結果が出るのか分かっていない。軽い気持ちで行動しているのだ。

 撫子は、ちょっとしたワガママで命を落としかけた。それが不運が重なった結果であったとしても、その不運を理由に「呪いをかけたこと」が正当化されるハズもない。
 「かけた側」がしでかしたことは「殺人未遂」である。一歩間違えば「殺人」にすらなっていた。そんなつもりはなかったと言うのだろうが、どんなつもりであれ、結果は結果である。

 撫子が何か「死」に値するようなことをしたわけではない。罪に問われることすらしていない。こんな「ワガママ」な気持ちで死に至ったとしたら、彼女を大事に思う人はどうすればいい。
 今、相手が大人しいからといって、ムカつくからといって、ウザいからといって、軽い気持ちで誰かを傷つけてはいないか? それがどんな形をした刃であれ、刃である以上人は傷つくのだ。
 しかも、その傷は「傷つけた側」からは見えにくい。ちょっと切ったくらいのつもりが、致命傷ということもある。そのことを忘れてはならない。

 今回の「なでこスネイク」のテーマとしては、おそらくこういうことだと思う。これだけでも、まぁ、結構重いテーマなのだが、前述のようにこれには裏があると思われる。
 今回の話には、もう1つの「ワガママ」があった。無論、暦の「誰でも助ける」ことだ。
 彼自身、吸血鬼との邂逅を経験しているせいか、出来うる限りそうした出来事で傷つく人を救いたいと願っているのだろう。
 その心がけそのものは立派だし、戦場ヶ原ひたぎを始め、救われた人は少なくない。だが、同時にこれは暦のエゴでもある。そして、暦は自分が「何をしているか」分かっていない。

 当人としては、単に人助けというか、悲惨な結末を回避したいという優しさを持ち合わせているに過ぎないのだろう。人助けに理由はいらない。そういう話。
 つまりは、大きな意味での考えはなく、「信念」というほどに貫かれた想いではないのだ。ただ助けたいと思った、という刹那の感情。
 だから「気づいていない」わけだ。自分が「何をしているのか」ということに。事もあろうか、振られたからといって(結果的には)撫子を殺そうとした相手すら、助けようとしたのだから。

 人命を尊重したといえば聞こえはいいが、問題は暦が「気づいていない」ことだ。ただ単に、ここで「蛇」を行かせてしまえば「呪いをかけた奴」へと返ってしまうため、その結果どうなるかは目に見えているから、それをどうにかしようと思っただけだ。
 全部分かった上で、それでもどうにかしようとしたわけではない。己の力量も弁えず、出来るかどうかすら考えていなかった。感情的に行動してしまった、それだけだ。

 無論、暦の行動は非難されるほどのことではない。だが、誉められたものでもない。もし、あのまま戦いつづけて、暦が死亡することにでもなったら、撫子はどうなる? ひたぎはどうなる? 彼女たちの気持ちを、暦はどれだけ考えていたというのか。

 つまり、暦も呪いをかけた連中と、方向性の違いはあれ「同じ」だったのだ。忍野が「考えろ」といった部分もまさにここで、暦の「ワガママ」で怪異に関わることを窘めている。
 呪いをかけた二人が、そんなつもりはなかったとしても、結果として撫子の命を脅かしたように、このまま同じようなことをしていれば、いつか暦も「そんなつもりはなかった」になるかもしれない。
 人間、自分がどうしたいと思っても、それが必ずしも叶うわけではない。それどころか、思うように行かないことの方が大部分を占めることだろう。
 だから、何をどうしたいと願うのはいいとしても、ちゃんと「考え」ないといけないということだ。ただ漠然と感情のままに走るのではなく、自分で考え、行動するべきである。
 それは、自立という「大人への階段」だろう。「ボクみたいな専門家がいつまでもいるわけじゃない」という忍野の台詞は、「いつまでも親はいないのだから」と読み替えることが出来る。
 つまり、そこに悪意があろうがなかろうが、現在進行形で「ワガママ」に甘えている人々への強烈なメッセージなのではないだろうか。「そんなつもりは」とならぬよう。

 これが、ボクが感じた「なでこスネイク」における「裏」である。なんとも頭が下がるというか、本当に良い作品に出会ったと思えるところだ。
 近年紙面を賑わせる様々な問題を取り上げ、実に巧妙にテーマとして組み込んでいる。この手法そのものは比較的ありふれたものではあるが、手法を扱う腕は作者のもの。
 全く同じテーマで作品を作ったとしても、西尾維新氏より優れた作家は、そうザラにいるものではないだろう。2/24発売のつばさキャット(上)も期待してやまない。

 キャラクターや展開にも素晴らしいものがあり、やや独特の癖のようなものはあるが、それがテーマを引き立てている。怪異なんて作風もあるのだろうが、日本的というのかな。ゆったりと身を浸すような緩い流れかと思えば、一気に打ち砕く大波へと変化していく。
 オタク的な美少女文化みたいな部分を持ち合わせながらも、そこに縛られすぎずに作品のテーマを描き出している。緩い会話にセンスの光る部分もあり、言葉にすれば「すげぇ」というところ。

 ボクとしては、なかなか文句をつけられそうな部分を見出せない。毎度言っている気もするが、あえて言うならば、その独特な雰囲気は好き嫌いがありそうなところ。
 あとは、ある程度読解力がないと分からないことか。ボクは自分が読解力のある人間だ、とは思わないけれど、ぼへ~っと眺めているだけでは理解出来ないのも事実。
 まぁ、それ故にあまり子供には向かないことかな。さすがにちょっと大人向けかなぁとは思う。難しすぎることもないと思うけど、簡単ではないだろう。

 何というか、さすがに話題になるだけの人というところ。商売にばかり走って、金、金、という作品が増える中でも、こうした圧倒的なまでの実力があれば輝ける。そういう部分にも惹かれるものがあるな。詰まらない量産品など、ねじ伏せるような作品が増えると嬉しい限り。
 少なからず、キャラクターを描き、「人」としての物語を語ろうというのに、「心」さえ見えてこない作品が多いということ自体どうかしてる気もするけどね。

 しかし、「化物語」はジャケだけ見ると、今時の「萌え~(古っ)」ってな作品に見えるというのに、中身がこれだけ濃いとは、借りて視聴するまで夢にも思わなかった。
 こう「見かけじゃない」みたいな作品があるから、「見るからにヤバそう」な作品も視聴しちゃうんだよな(笑)。まぁ、ごくたまにでも当たりがあればオッケーだしね。

 いやはや、何にせよ、今後も西尾維新氏の作品には注目といったところか。この方、書くペースも速いらしく、結構な数書いているらしい。
 昨今、読みたいと思うようなものがなくて遠ざかっていたが、久しぶりに小説を買って読むのも悪くないかもしれないなぁ。

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